必要最小限の道具でレザーベルトを自作したらコスパ最強のベルトが完成した話

必要最小限の道具でレザーベルトを自作したらコスパ最強のベルトが完成した話

レザーベルトってどれだけ大切に使っても寿命ってありますよね。バックルは気に入っているけれど泣く泣くお別れ…なんてこともよくある話です。そんなときにふと気づいたのが「ベルト部分を手作りすればよいのでは」ということ。レザークラフトはいろいろな道具が必要そうで敬遠していたのですが、ベルトの自作であれば必要最小限の道具でなんとかなりそうです。しかもネットショップには、「ハーマンオークのUKブライドルレザー」や「ホーウィンのクロムエクセルレザー」など心くすぐる素材が販売されています。これは挑戦してみるしかない!と、レザークラフト初心者がベルト作成にチャレンジしてみました。結果は上々で、お気に入りのバックルは復活し、コスパ最強の自作ベルトが完成。ベルト作成に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

作成したベルト

さっそく、作成したベルトを見ていただきたいと思います。

素材はちょっと贅沢をしてハーマンオーク社のUKブライドルレザーを選択しました。かなり分厚く(4.5mmほど)ワイルドな雰囲気。

バックルはもともと使っていたベルト(MARTIN FAIZEY)のモノを再利用。エコですね。

ちなみに、リラックスして履きたいパンツ(短パンなど)はベルトをしなくて済むように、ウエストをゴムに改造しております。気になった方は下記チェックしてみてください。

ベルト作成にかかった費用

家にある道具をできるだけ活用しつつ、必要最小限のアイテムを購入したら、費用はベルト用のレザーを含めて約7,000円(税抜き)でした。

詳細は下記をご覧ください。

  • ベルト用レザー:約4,000円(もっと安い革なら2,000円くらい)
  • ベルト用レザー加工費:約800円
  • ベルト穴あけ用ポンチ:約900円(100均でも購入可能)
  • コバ面・底面処理剤:約500円
  • ヘリ落とし:約900円(省略可能)

7000円のベルトって安くないじゃんと思われるかもしれませんが、使っているのは有名タンナーの高級ブライドルレザー。完成品のベルトであれば、このお値段での購入はできません。

ベルトのレザーをもう少しお求めやすいものにして、加工を端折れば3000円程度で本格的なレザーベルトが作成が可能。コスパ最強のベルトといってよいでしょう。

今後もレザークラフト(というかベルトの作成)をする予定なので、ちょっと良い穴あけポンチ(楕円)とヘリ落としを購入しましたが、このあたりはさらなる節約ポイントとなるはずです。

なお、ハンマーやカッター用のマットなどは家にあったものを使用。それらアイテムもそろえる場合、もう少しお値段することにはご注意ください。

ベルト作成の手順

続いてはベルト作成の手順についてご紹介していきたいと思います。といっても、ほぼ完成品のベルトを購入したので、作業はあっという間に済みました。

ベルト用のレザーを購入

まずはコレがなくちゃ始まらない、ベルト用レザーを購入します。利用したのは以下のサイトです。

出典:LertherCraft.jp

上記ショップを選んだ理由はレザーの種類が豊富だったから。今回利用したハーマンオーク社のUKブライドルレザー(UKとついていますが、アメリカ製)のほかに、ホーウィン社のクロムエクセルレザー(ホワイツやラッセルモカシン等の名作ブーツでおなじみ)なども購入できます。「それらのレザーを使ってベルト作るの面白そう」と思ったのが、今回ベルト作成に踏み切った最大の理由です。

また、ベルト作成にちょうどよい製品があったこともポイント。ベルト状にカットしたレザーを販売しています。しかも、バックル周辺のレザーを薄くする漉き加工を220円、バックル止め用のボタン取り付けを550円で行ってくれるので、それもお願い。ということで、レザーが届いた時点でほぼベルトが完成しています。

「自作じゃないじゃん!」なんて言葉も聞こえてきそうですね。まあ、確かにおっしゃる通り。ですが、そろえる道具を必要最小限にとどめるためには、頼める部分を人に頼むことも大切です。

ちなみに、LertherCraft.jpさんでは完成品のベルトも販売しており、それを購入すればバックルに取り付けて即終了。道具も一切必要ありません。なのですが、さすがに味気ないのと、入門的にレザークラフトを体験してみたかったので、最低限の加工は自分で行うことにしました。

注文から4日ほどで届いたベルト。これから楽しい作業が待っているかと思うとワクワクしますね。

なお、アマゾンではないので、注文翌日に届くといったことはありません。週末の作業を予定している方は早めの注文をおすすめします。

届いたベルトの詳細

ベルトの作成に入る前に、届いたベルト(の素材)のディティールをご紹介していきたいと思います。上でもご紹介しましたが、ハーマンオーク社のUKブライドルレザーを選択しました。

ブライドルレザーといっても、ホワイトハウスコックスのようなツルツルした表面ではなく、フィルソンのバッグのハンドルのような武骨な雰囲気です。

まずはバックル取り付け側をアップ。サル革(小さなループ)も付属しています。

バックルを通す加工が施されており、すぐにでも取り付けて使えそうな感じです。なのですが、断面を見てみると以下のような感じ。

ワイルドというか、木材っぽいというか、いずれにしても「素材感」を感じます。このままベルトとして使うワケにはゆかなそうです。

取り付け側の裏は以下のような感じ。

漉き加工(薄くする加工)が施されおり、その部分の色が違います。やはりレザーというよりも木材(パーティクルボード)っぽく感じます。

一方、ベルトの先端部分は以下のような形です。

オーソドックスな形なので、さまざまなベルトにマッチしそうです。

ヘリ落とし

レザークラフト入門的な本を読んでいますと、断面のエッジ部分を「ヘリ落とし」という道具で落とすように書かれています。おでんの大根の面取りをするようなイメージで、ヘリを落とした方が仕上がりがよくなるようです。

確かにベルトや財布など、家にあった革製品の断面を見てみると、丸みを帯びています。コレがヘリ落としの効果だったんですね。

ちなみに、ベルト作成の作業前、東急ハンズのレザークラフトコーナーで色々教えてもらったのですが、その際に対応してくれた店員さん曰く「手軽に仕上げたければヘリ落としは省略しても大丈夫ですよ」とのこと。

教えに従い省略しようか悩んだのですが、せっかくなので挑戦。入門用のリーズナブルなヘリ落としを手に入れてみることにしました。おでんの大根だって面取りをしていた方が煮崩れしにくいですし、見た目もかっこよいですからね。

手に入れたのはセイワのヘリ落とし(No.2)で、900円ほど。なお、ヘリ落としはメルカリなどで中古が販売されています。おそらくレザークラフトに挑戦し、最近やらなくなったという先人たちがリリースしているのでしょう。そういったモノを手に入れればより安く済むはずです。

実際に作業してみたのが以下。

面白いようにヘリがスルスルと切れていきます。表も裏もヘリを落としてこの作業は終了です。

落としたヘリはこんな感じ。

リンゴの皮がきれいにむけたような心地よさがありちょっと面白かったです。

一方、ヘリを落とした断面は以下のような感じになりました。

角が取れ、見た目はちょっとよくなったような気がしています。「気のせいじゃない?」といわれると、「そうかも…」といってしまいそうな程度ではありますが。

ついでにサル革のヘリも落としておきました。

必要なのかは不明ですが。ちょっといい感じになった気がしています。

コバ面の処理

続いてはコバの処理を行います。コバとはレザーの断面のこと。処理しておくことによって、水や汚れに強くなるようです。購入したてのベルトや財布の断面って革なのにツルっとしていますよね。うまくやればあんな感じになるようです。

使ったのは「トコノール」の黒。断面に色をつけつつ、断面の処理をしてくれるという優れものです。近所のホームセンターで500円くらいで売ってました。メルカリで量り売りをしている人もいるので、ちょっとだけ使ってみたい方はそれらの利用もおすすめです。

指でちょいちょいと塗りこみます。銀面(表側)にはみ出してはダメらしいので、そこは気をつけて。

半がわき状態で磨けということなので、すぐに帆布でゴシゴシと。帆布がよいという情報をネットで見かけたので、家にあった帆布の切れ端を使ったのですが、効果のほどはよくわからなかったです。

本来は専用の道具(スリッカー)でこするらしいのですが、とりあえず家にあるもので代用します。

なお、トコノールは塗ってるそばから乾いていくくらいの勢いなので、乾くのを待つということはなかったです。

断面全体に塗り込んだのが以下。

ちなみに、塗り込む前は以下のような感じ。

断面(コバ)に色がつくだけで、雰囲気はずいぶんと変わるものですね。

レザーの裏側である床面(トコ面)は処理してある風なので、このままでよしとして、漉き加工(レザーの厚みをとる処理)をお願いしていたバックルをつける部分はザラザラなので、そこにもトコノールを塗ってゴシゴシと。

素材感が薄まり、ベルトらしさが大幅アップです。

なお、手でトコノールを塗りこむ際のポイントは「手の届く場所に濡らしたぼろ布とティッシュを用意しておく」です。

手で作業をしていると、どうしても想定外の場所にトコノールが付着するもの。そのままの手でベルトを触ってしまうと余計なところにトコノールが付着してしまいます。手が汚れるたびに濡れたぼろ布で拭っておけば、余計な場所を汚すことはありません。ティッシュも同様の理由です。トコノールがはみ出しても、手に届くところにあればサッとひとふき。焦る必要が無くなります。

ベルト穴あけ

続いてはベルト作成で最も重要であろう穴あけです。まずはメインの穴開け位置を決めます。これまで使っていたベルトを参考にしました。3つ目の穴だと大きすぎ、2つ目の穴だとやや苦しい…。その中間のやや3つ目よりを中心とします。

穴あけの位置を決めたのち、正確に穴をあけられるように、型紙を作成しました。「楕円はズレやすいので注意」ということを東急ハンズのレザークラフトコーナーの店員さんに教えてもらったのです。

確かに円形の穴であれば、中心さえあっていれば、綺麗に穴をあけられます。一方、楕円ですと、長い方の軸とベルトが平行になっていないとおかしなことになってしまいますよね。型紙を作ってみたところ、1番目と5番目の穴が斜めってしまいました…(なお、今になって見ると3番目もちょっと斜めってます)。そこは紙をずらして対応することにします。

型紙を当てて、ポンチの位置と向きを正確にあわせて、ハンマーでたたきます。

緊張しながら作業をしたためか、作業途中の写真を撮り忘れ…。なんとかいい感じに穴をあけることができました。

なお、ポンチで穴あけの作業は想像の10倍くらい強くたたく必要がありました。「軽くコンコン」で穴があくイメージだったのですが、実際には「強くガツン!ガツン!」といったイメージ。作業する時間に気をつけないと、ご近所トラブルになりかねないので注意です。

【追記】

楕円穴のベルトを作成したい方に向け、型紙を作成しました。下記ブログにて公開していますので、あわせて参考にしてみてください。

綿棒を使って穴の断面にもトコノール(処理剤)をぬりこみます。

これにて主な作業は完了です。

バックルを取りつけ

続いては最後の工程である「バックルの取り付け」です。なのですが、取り付ける前に、既存のベルトからバックルを取り外さなくてはなりません。ずいぶん長く使っていたためレザーはボロボロになっていますが、バックルは元気です。

既存のベルトは縫ってあるので、縫い糸をカッターで切れば簡単に外れました。カシメなどの金具で固定されている場合にはカットするしかないでしょう。まあ、使わなくなったベルトですから、どんな方法でも良いはずです。

バックルをぼろ布で磨いて、新しいレザーに取り付け。

想像以上によい感じ。これにてすべての作業は完了。ベルトの完成です。

さっそく装着して悦に入ります。

装着してもよい感じです。

ベルト自作のメリットとは?

ベルトを自作してみて感じたメリットについてご紹介していきます。

コスパ最強である

ここまで述べてきた通り、自作ベルトはかなりコスパ良好です。いろいろと道具をそろえても、市販のベルトよりもリーズナブル。しかも穴あけポンチなどの道具はずっと使えます。つまり、2本目・3本目と作成すれば、どんどん単価はお求めやすくなっていく計算です。

私の場合、黒のベルトを2本、茶色のベルト1本を主に使っているのですが、すべてを作り替える予定でいます。しっかりとしたベルト3本を購入するとなると、まあまあの出費になりますが、自作であれば1万円でおつりがくるほど(レザーの種類に依る)です。

ぴったりサイズのベルトが手に入る

完璧にピッタリサイズのベルトが手に入ることもポイント。

私はやややせ型のため、31インチだとちょっと大きいけれど、29インチでは小さすぎるという微妙なサイズ感です。自作であればそんなお悩みは関係ありません。装着してみたところ、まさにピッタリで、「コレだ!」とうなるほどでした。

お気に入りのバックルを再利用できる

バックルを再利用できることもベルト自作のメリットです。ベルトってレザー部分はダメになりますが、金属製のバックルはそうそうダメにならないですよね。レザー部分がダメになるたびにお気に入りのバックルとお別れするのもなんだかなぁ…と思っていたのですが、レザー部分だけを作り直せば再利用可能です。

下記写真は、やはりベルト部分にダメージがあるベルトのバックル部分。

気に入っているものですし、近日中にベルトを付け替えてあげようと思います。

【追記】

上記バックルもレザー部分を付け替えて復活させました。その模様は下記ブログにてご紹介しています。

革製品に対する愛着が深まる

自分で作業をする場合、なんだかんだと調べものをするものです。今回もベルトとは関係ない部分に関しても色々と知識が身につきました。そんな目で愛用の財布やカードケースを眺めてみると、「なるほどこうなってたのね」などなど、新たな発見があるものです。既存の愛用品について、あらためて愛着がわきました。

今後の改善点

今回実際にベルトを作成してみたワケですが、想像しているのと実際に作業してみるのはやはり大違い。今後の改善点をご紹介しておきます。これからベルトを作成してみたい方は参考にしてみてください。

革の厚みをチェックすべし

今回ベルトに使用した革の厚み(写真は以下)をノギスで測ってみたところ4.5mmほどありました。レザークラフト.jpさんのHPにも確かにそう書いてあります。

一方、もともとのベルトの厚み(写真は以下)は3.5mm程度でした。厚みが1.0mmも違うと、雰囲気が違ってくることは想像に難くないかと思います。

なのですが、今回は何も考えずに、4.5mm厚のままで購入。無意識的に、「分厚い方がかっこよい」なんてことを考えていたような気もします。

4.5mm厚のベルトはなかなかの迫力で、ジーンズによく合います。ですが、スーツにはちょっと厳しいかな…。まあ、めったにスーツは着ないのでとりあえず問題はないのですが。

また、かなり分厚いため、着け心地もタフ(婉曲した表現)な感じ。もう少し薄い方が快適だと思われます。

元のベルトと同じ雰囲気・着け心地を目指す方は、厚みは要チェックです。なお、レザークラフト.jpさんでは+220円(税込み)で、全体の漉き加工(薄くする加工)をしてくれます。次回ベルトを購入する際には利用する予定です。

穴の大きさをチェックすべし

今回、ベルトを作成するにあたり、一番悩んだのがベルトの穴あけ用ポンチのサイズです。

そもそもベルトの穴用にぴったりそうな楕円のポンチがなかなか見つからず(円形はすぐに見つかる)、見つけられたのは以下の5つでした。

  • クラフト社 ベルト穴あけ10号(3.6×3mm)
  • クラフト社 ベルト穴あけ12号(4.7×3.6mm)
  • クラフト社 ベルト穴あけ15号(5.7×4.5mm)
  • 協進エル 楕円抜き 小(4.0×3.5mm)
  • 協進エル 楕円抜き 大(5.0×4.0mm)

正直、どれがピッタリなのかスペックを見てもイマイチぴんと来ません。自前のベルトの穴の大きさをはかると結構小さいような気もしますが、それに合わせたポンチを選んで穴が小さすぎるのも困ります。

そこで現物を見ようと都内をウロウロ。クラフト社の12号と15号は東急ハンズ渋谷店においてあり、実際にあけた穴を見せてもらいました。その結果、「ちょうど良いのは12号と15号の間くらいかなぁ」とあたりをつけて、協進エル 楕円抜き 大(5mm)を購入。開けた穴と、元のベルトの穴を比べると、以下です。

ちょっと穴がおっきかったですね。ベルトの厚みがあるので、これぐらいの方が使いやすい気もしますが、見た目はカジュアルよりになってしまいました。

ベルト(メンズ)を上品な感じに仕上げたい方は12号くらいの方がよいかもしれません。

【追記】

ベルト用にぴったりの楕円の穴あけポンチについて下記にて解説しています。気になった方はぜひ参考にしてみてください。

コスパ最強のベルトを手に入れたいなら自作に挑戦

以上、レザークラフト初心者がベルト作りにトライしてみた話です。特に難しい作業はなく、リーズナブルな価格で本格的なベルトができました。

しかも、お気に入りのバックルを再利用。エコですし、気に入っているベルトを再び使えるのはうれしい限りです。レザーが痛んでいるベルトが他にもあるので、全部復活させようと考えている今日この頃。ベルトの作成、おすすめです!

最後に今回使ったアイテムについておさらいしておきます。ベルト自作に挑戦してみたい方は参考にしてみてください。

■ベルト用レザー

LertherCraft.jpにて購入。ベルト用レザーの種類が豊富で見ごたえあります。

■ヘリ落とし(No. 2):断面の角を落とし滑らかにします

今回は厚めの革を使用したので、No. 2を使用しました。

■トコノール:断面を処理します

トコノールには無色と色付きがあるのでご注意ください。下地の色を活かしたい方は無色がおすすめです。

■楕円抜き:ベルト用の穴をあけます

楕円にするか丸い穴にするかは好みの問題です。楕円ですと、まっすぐ打つのはやや難易度があがるという点にはご注意ください。

—–必要な道具はここまで—–

最初は道具も必要ですし、ちょっとハードルが高く感じますが、道具は何度でも使うことができますし、DIY好きであれば、持っていて損はありません。ベルトの作成、ぜひトライしてみてください。

【追記】

スタッズベルトを作成してみました。シンプルなデザインで使いやすく気に入っています。気になった方はぜひチェックしてみてください。

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