20年近く愛用しているダック生地のカバーオール。頑丈なダック地とはいえ、さすがに袖や裾が擦り切れてきました。「味」といえないことも無いのですが、あまりに味が出た服は合わせにくいモノ。というワケでお直ししました。そんなカバーオールの補修についてやり方や作業のポイントについて解説していきます。
お直ししたカバーオールのビフォーアフター
まずはお直しをしたカバーオールのビフォー・アフターをご紹介します。以下がビフォー。20年ほど前に購入したモノで、裾や袖口などがボロボロになっています。一方、本体に大きなダメージはないためまだまだ使えそう。となると、自分でお直しするしかありません。
ダメージがわかりにくいので、袖口付近を拡大すると…
この部分が擦れやすいのか、両側ともにこんな感じになっています。
以下が補修した後の姿。まずは全体像から。
袖口と裾をアップにしてみるとこんな感じに。
裾や袖口の穴から飛び出していた糸が無くなり、すっきりとした印象になりました。カバーオールなどタフな衣類に関してはボロボロなのも味があってよいもの。なのですが、年齢を重ねるとどうしても似合わなくなります。ボロボロの服を着こなせるのは若者の特権です。
ちょっとキレイすぎて生地に馴染んでいない気もしますが、洗濯すれば馴染むでしょう。
なお、今回は襟に開いた穴も補修しています。修理前の襟のアップは以下。
ところどころに穴があいています。穴の奥に貼られた接着芯の白が目立ち、ちょっと微妙な感じです。
襟を修理したのが以下。
襟を裏返したので穴は完全にかくれています。
カバーオールの裾・袖口・襟それぞれについて、修理のやり方について紹介していきます。
カバーオールの裾を自分で補修する方法
以下のような裾の擦り切れを補修する方法は大きく分けて2パターンあります。
ひとつ目のパターンは、裾の折り返しを大きくすること。
メリットは作業が簡単なこと。基本的にはほどいて折り曲げて縫うだけなので、ミシンがあればあっという間に作業できます。また、擦り切れが完全に隠れるため、キレイに仕上がることも魅力です。
デメリットは、丈がちょっと短くなること。長さに余裕があるカバーオールだけに許されたテクニックです。また、色落ちなどがあると、せっかくの風合いが台無しになることも大きなデメリット。デニムのカバーオールなどには不向きな修理方法です。
デニムのカバーオールなど、せっかくの色落ちを大切にしたい場合におすすめなのが、以下のような方法。まずは裾の折り返し部分を開きます。
続いては接着芯やミシンを使って穴を補修。
同じ折り目で再び折り返します。
このパターンのメリットは色落ちなどの風合いを残しやすいこと。デニムのカバーオールをお直しするのであれば、この方法がおすすめです。灰色など馴染みやすい糸を使って穴を叩けば目立たないように仕上がります。一方で作業が大変なことはデメリットです。
デニムをミシンで叩いて穴を埋める方法は下記ブログが参考になるはずです。
今回は色落ちを特にきにしなくてよいダック地のカバーオールだったので、簡単でキレイに仕上がるパターン①で行っています。以下、その詳細なやり方についての解説です。
カバーオールの裾を補修:縫い目をほどく
まずはカバーオールの裾をほどきます。カッター・ハサミ・リッパーなどを使えば簡単にほどけるはずです。生地を傷つけないことだけには十分ご注意ください。
以下が一周ほどいたあと。
前立て部分など、生地が重なっている場所は必要最小限ほどいています。これにて下準備完了です。
カバーオールの裾を補修:折り目に沿って生地をカット
裾の生地はそのまま大きく折り曲げてもよいのですが、きれいに仕上げるために、破れた穴に沿ってカットしました。
生地をまっすぐキレイに切りたい場合、ハサミよりもロータリーカッターが便利です。
そして布の端がほつれないように処理します。
写真ではロックミシンを使っていますが、ジグザグ縫いでも十分に役割をはたしてくれます。
布の端を処理したのが以下。
これで裏側が見えたときにも違和感を覚えにくい仕上がりになります。とはいえ、裏側の見た目にこだわる必要があるかは微妙な話。折り返しの位置を変えて縫うだけで十分にお直しできるので、この工程は端折っても大丈夫です。
カバーオールの裾を補修:折り返して縫い付ける
カバーオールの裾を折り返してアイロンをかけておきます。穴がしっかりと隠れる位置で折り返すのがポイントです。
折り曲げたらあとはまっすぐ縫うのみ。
ステッチ定規を使うと、割と真っすぐ縫えます。
裾を縫う際のポイントは、細かいことにはこだわらないこと。「全体をまじまじ見るとステッチが歪んでる…」という場合でも、着用してしまえば気にならないケースがほとんどです。というか、他人のオーバーオールの裾のステッチがまっすぐかどうかに注目する人なんて誰もいません。
以下、裾の補修が完成した写真です。
ボロボロで糸がはみ出していたカバーオールの裾がすっきりとしました。これでもう少し気軽に着用できそうです。
続いては袖口のお直しについて解説していきます。
カバーオールの擦り切れた袖口を補修
続いてはボロボロになっていた袖口の修理です。大筋は裾の修理と同じなのですが、ドーナツボタンとボタンホールをどうするかという問題が立ちふさがります。
カバーオールの袖口を補修:ドーナツボタンを取り外す
カバーオールの袖口をお直しする際、立ちはだかるのが金属のボタンとボタンホールの存在。ボタンホールは手縫いでも作成できますが、手では縫えない金属のボタンの処理はそう簡単にはゆきません。金属のボタンがあるせいで縫いづらく、作業をあきらめるといったケースも珍しくありません。
逆に言えば、金属のボタンが無ければ作業の難易度が大幅に下がるということ。ということでドーナツボタンを取り外します。ボタン部分は再利用できるよう、慎重に作業しました。
取り外したボタンは以下のような感じ。表にくるボタン側は再利用します。
下記にて、カバーオールに使われがちなドーナツボタンの外し方・つけ方について解説しています。外したボタンを再利用するためのポイントについても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ボタンを外してしまえば、あとは裾の補修と同じようなモノです。
カバーオールの袖口を補修:袖口のカット
基本的には裾の補修と同じ流れですが、袖口はダメージが大きかったため、ボタンホールの部分から大胆にカットしました。
カットした布の端がほつれないようにジグザグで処理します。
折り返して縫い直し。
表に返したら以下のような感じ。
これにて、袖口の穴も気にならなくなりました。
袖を通すたびに穴に指が引っかかっていたのですが、それが無くなり着やすくなったこともポイントです。
カバーオールの袖口を補修:取り外したドーナツボタンを付けなおす
最初に、先ほど取り外しておいたドーナツボタンを再度取り付けます。
難しそうに見えますが、専用のパーツと工具があれば、案外簡単な作業です。工具は1000円ちょっととリーズナブルな価格帯。洋服のお直しが好きな方であれば、持っておいて損はありません。
ドーナツボタンの付け方に関しても下記ブログで紹介しています。
カバーオールの袖口を補修:ボタンホールを手縫いで作成(予定)
最後にボタンホールを手縫いで作成するつもりだったのですが、「どうせ誰も見てないし…」と思うとどうも気が乗らない。使うことも基本的にないですし。
リフォーム屋さんでボタンホールを作ってもらうというのもアリですが、そこまでするほどでもないかと放置しています。そのうち作成したら、詳細について解説したいと思います。
カバーオールの擦り切れた襟を補修
カバーオールの襟も擦れて穴があきやすい部分のひとつ。襟の補修方法はいくつかありますが、色落ちを気にしないのであれば、取り外して、裏返して、取り付けるのが簡単です。この方法のメリットは作業が簡単なこと。また、襟の裏側はダメージが少ないため、うまくいけばキレイに仕上がります。
一方で、日焼けによる色落ちがひどい場合、色味にズレが生じることがデメリットです。また、デニムのカバーオールなど襟の色落ちが気に入っている場合、せっかくの色落ちが見えなくなってしまいます。
色味を気にする場合には、取り外して、穴をミシンで叩いて、再度取り付けるのがよいでしょう。襟の穴を叩く場合、下の写真のように取り外した襟を広げ、できるだけ解体せずに作業するのがおすすめです。
襟をひっくり返して縫い付けるのに比べ、作業工数は増えますが、色味という意味では違和感少なく仕上がります。
なお、今回は表と裏で色の違いをそれほど気にしなくてよさそうなので、シンプルに裏返して補修することにしました。
カバーオールの襟を補修:取り外す
補修するにあたり、とりあえず襟を取り外します。リッパーやカッターなどを使えば簡単な作業です。
生地を傷つけないようにということだけはしっかりと気をつけてください。また、基本的には生地をほどいた順番で、縫い付けることになるため、順番はしっかりと覚えておきましょう。
無事に取り外せました。
幸い、表と裏でそれほどの色の違いは見られません
襟は折シワがついているので、アイロンでしっかりと伸ばしておきます。
ピンと伸びたら準備完了。縫い付けていきます。
カバーオールの襟を補修:裏返して取り付ける
続いては取り外した襟の裏と表を変えて取り付けます。
ポイントは中心をしっかりと決めること。襟を半分に折りたたみ、本体と合わせて場所を確認します。
中心の位置を合わせたら、中心付近だけを縫い付けてしまいましょう。
これだけで、襟が大きくズレることがなくなります。
あとは位置をしっかりと合わせて、縫い付ければOKです。
洋裁に慣れていない方が襟をきれいに縫い付けるコツは「両端から中心に向かって縫い付けること」。生地がズレにくいはずです。ほどいた逆の順に縫い付けていきましょう。
襟を縫い付けたあと、外しておいたブランドのタグを縫い付けました。
よいかんじに仕上がりました。
なんだかんだと愛用しているNECESSARY OR UNNECESSARYのカバーオール。購入したのは2000年頃でしょうか。福岡県久留米市にあったクリックというお店で出に入れたはず。まさか20年以上着用するとは…。情報の少なかった当時「大阪のお店のオリジナルアイテム」という売り文句に惹かれ購入した想い出があります。
擦り切れたカバーオールは自分で補修可能
以上、カバーオールの裾の擦り切れを自分で補修した話でした。20年ほど着用してボロボロになっていましたが、また新たな気持ちで着用できそうです。お直しをすると再び着れることもうれしいのですが、さらに愛着が深まることが最大のメリットな気がします。捨てられないけどボロボロで着ずらいカバーオールをお持ちの方は、ぜひお直しにチャレンジしてみてください。
以下のブログでは同じカバーオールを染め直した模様について紹介しています。気になった方はぜひチェックしてみてください。